現在の日本の国境は、サンフランシスコ平和条約の締結により確定しましたが、ソ連(ロシア)など一部の国とは平和条約を締結せず、今日の紛争を招いています。国境の基本事項をここでは記します。
四方を海に囲まれた日本。だから日頃は国境を意識しませんが、国境の概念は意外と難しいものです。国境に関する事項をまとめてみました
静かな海に小さな島がぽつんポツンとみえます。海はべたなぎ。そう言えば「凪」の字は国字。静かな日本人が作った和製漢字です。
大きな船がゆうゆうと海を走っています。日本の領海を守る広い甲板の船、ゆうゆうと航行する海上自衛隊のヘリ空母
昔は「うさぎ」には「カメ」が定番でした。ここでは「うさぎ」と「ネコ」になっています。どんな物語が展開するのでしょうか、楽しみです
日本の国境 ■国境は、講和条約(平和条約)の締結により確定する。 現在の日本の国境は、昭和26(1951)年のサンフランシスコ講和条約の締結により、ほぼ確定した。 しかしながら当時は、朝鮮戦争のただ中にあり、ソ連(現在のロシア)とは講和条約を締結しなかっ た。 また、中国は中華民国(台湾政府)と中華人民共和国(北京政府)とに分裂し、米国は中華人民共 和国を認めていなかったため米英の意見が一致せず、両政府とも招請されなかった。 さらに、韓国は日本と戦争状態にあったこともなく、また連合国共同宣言にも署名していないため 招請されなかった。 (1)サンフランシスコ講和条約と国境 講和条約(平和条約)の締結により、国家の主権が回復し、また国境が画定する。 現在の日本の国境は、「サンフランシスコ講和条約」(1951年)の締結により公的に確定した。 但し、沖縄、奄美諸島、小笠原諸島は米国の施政権下に置かれ、その後、本土復帰した。 ⇒ 本土復帰:奄美諸島(1953年) 小笠原諸島(1968年) 沖縄諸島(1972年) ■サンフランシスコ講和会議には52ヶ国が参加し、日本は49ヶ国と条約を締結した。 ・ソビエト連邦(当時)は会議に出席したが、講和条約に調印しなかった。 ■日本の国境と係わりの深い、次の国々は米英政府より講和会議に招請されなかった。 ・中華民国(台湾政府)、中華人民共和国(北京政府) *サンフランシスコ講和条約締結時の中国は、国共内戦で敗れた中華民国は台湾に遷都し、 中国大陸では中華人民共和国が成立(1949年)し、台湾政府と北京政府の二つに分裂して いた。 このため、どちらを代表政府とするか米英の意見が一致しなかったため招請されなかった (ウィキペディア:「日本国との平和条約」参照) ・韓国・北朝鮮 *「韓国は日本と戦争状態にあったことはなく、連合国共同宣言にも署名していない」こ とを理由に、韓国は講和条約署名国として招請されなかった (ウィキペディア:「日本国との平和条約」参照)。 (2)国境とは? 国境は、国家の主権が及ぶ限界線(領域)であり、領域には領土・領海・領空を含む。 ■領土・・・領域のうち、島嶼(とうしょ)を含む陸地の部分をいう。 ■領海・・・「国連海洋法条約(UNCLOS)」では、沿岸から最大12海里(約22.2km)の幅の水域 で、海底を含めた領域をいう。 但し、日本は次の海峡を「特定海域」の国際海峡として、領海幅を3海里としている。 宗谷海峡 津軽海峡 対馬海峡(東水道、西水道) 大隅海峡 ※UNCLOS:United Nations Conference on the Law of the Sea ■領空・・・領土・領海の上空をいう。上空の高さには、国際法上の制限はない。このため、外国の航 空機はその国の許可なしに領空を飛行することができない。これでは不便なので、国家が多数国 間の条約を結び,相互に領空の無害航行を認め合うことが一般化している。 (参考)宇宙、大気圏・・・国際航空連盟(FAI)の規定によると高度100km以上、またアメリカ 軍では50ノーチカルマイル(92.6km)以上が宇宙を指すと言われている ⇒国際航空連盟の基準では高度100km未満、米軍では92.6km未満が 「大気圏」で、それ以上が宇宙となる。 ※ 1海里(ノーチカルマイル) = 1.852km 1海里は、地球の経度の60分の1の長さ (3)公海とは? いずれの国の領海や、排他的経済水域にも含まれない海を公海という ■公海自由の原則・・公海は、全ての国が公海の自由(航行の自由,上空飛行の自由,漁獲の自由, 海洋の科学的調査の自由等)を享受することができる。 ■旗国主義・・・・・・・・船は船尾に船籍国の旗を掲げることになっており、船籍国のことを旗国とい う。船舶は公海において原則として旗国の法律が適用される。 ※日本の船会社が支配する船舶は、パナマ船籍など外国に船籍を置く「便宜置籍船」が多い。 公海において船内で犯罪等が生じた場合、パナマ国などの旗国の法律が適用される。 (4)島とは? 岩とは? ■島・・・水に囲まれていて高潮時にも水面上にある自然に形成された陸地を島と定義。 島にも独自に領海、接続水域、排他的経済水域、大陸棚が認められるため、国連海洋法条約 では、人工島は島として認められていない。 ■岩・・・「人間の居住又は独自の経済的生活を維持することのできない岩」に対しては、「岩」独自 の排他的経済水域や大陸棚を認められていない。 (5)領海・接続水域・排他的経済水域・大陸棚・公海 ■領海・・・沿岸の「基線」から、最大12海里(22.2km)の幅の海域で、その国の主権が及ぶ領 域をいう。 領海が隣国の領海と重なった場合は,原則として両国の基線の中間線までを領海とする。 ※基線とは、領海などを定める際の基準となる線。 ・基線は海岸の低潮線(最干潮時の海岸線)であり、海岸が著しく曲折していたり、海 岸沿いに至近距離に一連の島がある場所では適当な場所を結ぶ直線を基線(直線基線)に することが出来る。 ⇒ 日本では全国15の海域で、政令により162本の直線基線が定められている。 ■接続水域・・領海の外にあって、基線から最大24海里(44.4km)の幅の海域を接続水域という ⇒基線から最大12海里以内が領海、さらに領海から最大12海里以内が接続水域であ る。 ■排他的経済水域・・・基線から、最大200海里(370km)の幅に設定できる海域をいう。 ■大陸棚・・・国連海洋法条約では、海底の地形や地質が一定条件を満たせば、沿岸国は大陸棚を、 200海里を超えて外側に延長できると規定している。 ⇒ 日本は、2008年に近海の大陸棚約74万平方キロメータの延長を国連の大陸棚限界委員 会に申請した。 2012年、このうち大陸棚31万平方キロメータの拡大が認められた。 |
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領海・接続水域・排他的経済水域・大陸棚の概念図 | ||
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出典:「大陸棚」の定義-海洋政策研究財団 | ||
URL: http://www.sof.or.jp/tairikudana/01important/definition.php |
領海 |
主権が及ぶ領域 ・漁業や資源採掘の独占権がある ・出入国管理・衛生などの警察権を行使できる ■無害通航権・・・どの国の領海あっても、沿岸国にとって無害で、平和・秩序・安全を脅かさない |
接続水域 | 領海と接続している水域 ・関税、出入国管理、衛生など特定の行政目的に限り、沿岸国の管轄権を領域外に延長して行使でき る水域。 |
排他的経済水域(EEZ) | 基線から最大200海里の範囲で、排他的に主権的権利を有する水域 ・資源の探査・開発・保存・管理の主権的権利等を有する |
大陸棚 | 沿岸から、一定条件を満たせば最大350海里まで延長できる海底 |
参考図書類 | 著者名 | 出版社等 | 発行日 | |
日本の国境 | 山田吉彦 | 新潮新書 | 2006年03月25日第3刷 | |
日本の領土 これが答えだ! | 小川和久 | アスコム | 2012年12月05日第1刷 |
NO. | 写真・図など | 出 典 | URL |
@ | (日本)地図 | 国土地理院HP | http://www.gsi.go.jp/kikaku/kihon-joho-1.html |
A | 父島・長崎展望台 | 東京都小笠原村 | http://www.vill.ogasawara.tokyo.jp/info_chichijima/#1 |
B | 「大陸棚」の定義 | 海洋政策研究財団 | http://www.sof.or.jp/tairikudana/01important/definition.php |